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ノルシュターレン:
おいしいですか
シェルロッタシェルロッタ:
にゃーノルシュターレン:
あ、おかえりなさい
イーリアスさん
ほら、みてください
シェルロッタが帰ってきたんですよ
いままでどこに行ってたんでしょうね
………………
なに、可哀想なものを見る目で
わたしを見るんですか
シェルロッタですよ
シェルロッタさんではありません
エリルさんが飼っていたねこさんです
エリルさんは
よほどシェルロッタさんが
好きだったんでしょうね
なんにでもシェルロッタさんの
名前をつけちゃうんですよシェルロッタ:
にゃーノルシュターレン:
ああ、すいません
あなたのことではありません
ですから、シェルロッタは
シェルロッタさんのことではなくて
エリルさんがシェルロッタと――シェルロッタ:
にゃーノルシュターレン:
あーーーもーーーっ!
ややこしいです!
シェルロッタ:
にゃーノルシュターレン:
そういえばこの子
どことなく雰囲気がシェルロッタさんに
似てると思いませんかシェルロッタ:
にゃーん、ゴロゴロノルシュターレン:
……というように
イーリアスさんには
すぐ懐くところとか
あと、このしっぽなんかとくに……シェルロッタ:
フーーーーーーッ!!ノルシュターレン:
ひああっ!
ほら! 似てます!
すっごい似てますって!
………………ハァ
ほんと、そっくりで……
すこしだけ、せつなくなりますねシェルロッタ:
にゃー?ノルシュターレン:
なんでもありませんよ
しっぽをいたずらしてごめんなさいシェルロッタ:
にゃー
ノルシュターレン:
そういえば、イーリアスさん
なんだかさっきと雰囲気が違いますね
いろいろと吹っ切れた感じです
それでこそ
わたしや皆さんがよく知る
イーリアスさんです
………………
結局……この村の住人は
ふたりっきりになっちゃいましたね
イーリアスさんは
これからどうするんですか
やっぱり冒険に……?
………………そうですか
きっと、イーリアスさんなら
大成功まちがいなしです
わたし応援しまくりですよ
え……わ、わたしですか?
わたしは……
わたしはここに残ろうと思うんです
お師匠さまが前に言ってたとおり
魔法の研究というのは
場所を選ばないんですよ
それにここなら
お師匠さまの設備も整っていますし
慣れたものですから勝手もいいです
だから
ここでお師匠さまの夢を
継ごうと思うんです
昔、この森へきたときは
イヤなことから逃げて
すべて終わらせてしまうつもりでした
でも今は自分の意志で
ここに残ることを選びます
ノルシュターレン:
ここは、イーリアスさんの
家でもあるんです
もし、疲れたら気兼ねなく
戻ってきてくださいね
その時はちゃんとお迎えしますから
だから、イーリアスさん
――いってらっしゃい
ノルシュターレン:
いってらっしゃい
イーリアスさん
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ノルシュターレン:
あ、イーリアスさん
おはようございます
もう、今日もお寝坊さんですね
そんなことじゃ
みなさんに笑われてしまいますよ
さぁ、顔を洗ってきてください
食事にしましょう
ノルシュターレン:
うん、いつもの
イーリアスさんです
どうしたんですか、ボーっとして……
大丈夫ですか?
ほら、しゃんとしてください
今日も森の泉に行くんですよね?
でもなんか
毎日あそこへ行っては
うかない顔をして戻ってきます
なにか迷ってらっしゃるようですが
わたしでよければ相談にのりますよ
ノルシュターレン:
………………
すいません
ほんとはわかってるんです
でも、それは
イーリアスさんが
ご自分で決めるべきことです
ただ、ひとつだけ言わせてください
村のみなさんやシェルロッタさんが
イーリアスさんに
なにを託したのかを忘れないでください
みなさんはイーリアスさんの
幸せを思い描いていたからこそ
笑顔でいられたんだと思います
ずっと後ろを向いていては
みなさんが心配してしまいますよ
イーリアスさんが
きちんと前を向いて
ご自分の人生を歩いていくこと――
それが、みなさんの……
そしてわたしの願いでもあります
大丈夫ですよ
わたしはここにいます
だから
ゆっくりと考えて
答えを出してくださいね
ノルシュターレン:
ゆっくりと考えて
答えを出してくださいね
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ノルシュターレン:
エリルさん……お師匠さま……ウァルトリール:
ノルシュターレン
おまえはもう充分修練をつんで
知識を学び、技術を身につけた
俺が師として
おまえに教えられることはもうないよノルシュターレン:
そそそ、そんな滅相もないです
わたしまだ魔法とかなにもできません
結局、最後まで
教えてくれなかったじゃないですか
お師匠さまズルイですウァルトリール:
あんなもんは魔力さえあればコツだけだ
おまえが大人になれば
自ずとできるようになる
だが、凡人には一生を捧げてなお
到達できない領域に
おまえはたどり着いてしまった
おまえは自分のことを卑下するが
まちがいなく天才の部類だよ
例えは悪いが
あのラーケイクス博士と
肩を並べるほどのな
あれほどの短期間に古代語を習得し
すべての書物を
覚えてしまえる頭脳を持っている
書庫の本すべてを熟読し
そして理解したならば
俺の魔導書にも手を出したはずだノルシュターレン:
あ……はい、すいません
勝手に読んでしまって……
おもしろくてついウァルトリール:
しかも、おまえ
あの途中だった魔法式の解を
書いちゃっただろノルシュターレン:
…………あー、あれですか
そもそも中間式が間違ってましたので
直したら簡単でしたよウァルトリール:
…………う
おまえ、俺が二千年かけても
解けなかった問題をアッサリ……
その知識はな
今となっては失われた秘術に等しいんだ
外の世界へ出れば
今の魔法理論の体系をくつがえして
すべて作り替えてしまうこともできる
それが成されれば
おまえは地位や名声に恵まれるだろう
富や権力だって思いのままだ
おまえはなんにでもなれる
俺たちのように、こんな森の一角に
囚われなくていいんだ
おまえになにも残せてやれなかった
俺からの最後の贈り物だ
とっとけノルシュターレン:
……お師匠さまぁ……そんなの……
わたしには大きすぎますよぅ……
わたしが、ほんとうに欲しいのは……ウァルトリール:
わかってるよ
けど、それは言ってはだめだ
俺の夢をおまえに継いでほしいノルシュターレン:
……………
……はい、お師匠さま
ありがとうございました
エリル:
レンちゃん……ノルシュターレン:
エリルさん……
もう……行っちゃうんですか?エリル:
うん、ごめんね
一緒にいてあげられなくてノルシュターレン:
わ……わたしなら大丈夫ですよ
なに言ってるんですか
ほら、元気です、元気一杯です
だから安心してください
エリルさんのぶんも一生懸命生きます
あとあと
お別れしてもずっとずっとお友達です
わたしエリルさんのこと絶対忘れませんエリル:
うん、ありがとう、レンちゃん
シェルロッタ:
………………ノルシュターレン:
行っちゃいましたね……シェルロッタ:
ノルシュターレンノルシュターレン:
あ……は、はい、なんでしょうか?シェルロッタ:
もういいぞ
よくがんばったなノルシュターレン:
な、なにがですか
わ……わた、わたしなら大丈夫です
こんな……ことで……へこたれたら
お、お師匠さまとエリルさんに
笑われちゃいますよ、あははシェルロッタ:
おまえはやさしい子だな
だが、もういいんだ
こういうときは我慢しなくていいノルシュターレン:
なにを……ひっく……言ってるんで……
すかぁ……あはは……やだなぁ……
ひっく……そんなこと……
……………う
うぁっ……
エリルさぁぁぁぁぁぁぁぁん!
お師匠さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!シェルロッタ:
………………
ノルシュターレン:
エリルさぁぁぁぁぁぁぁぁん!
お師匠さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!
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ネタバレ注意。
ノルシュターレン:
お、おおお、お師匠さまーっ!?
あああ、イーリアスさん!
た、大変なんです、お師匠さまが
人魂みたいになっちゃいました
みてください! 人魂ですよ!
リンが反応して光る説は迷信なのに
なんでお師匠さま人魂になってんですか
お師匠さまは迷信なんですか
それともプラズマですか
実はガス状生命体で引火したんですかウァルトリール:
なんだよ
そのガス状生命体ってのは?
落ち着けっての、ほれ深呼吸しろノルシュターレン:
は、はい!
すーはー、すーはー……
お、おお、おち、おち、落ち着きましたウァルトリール:
……全然、説得力ねぇな
ノルシュターレン:
お師匠さま
ちゃんと説明してください!ウァルトリール:
………………
まぁ、仕方ないか……
あまり時間もなさそうだしな
あのな、ぶっちゃけて言うと
俺もう死んでんだノルシュターレン:
………………ウァルトリール:
あー、まぁ、そういう反応だろうなぁ
信じられないのも無理ないが
これが現実なんだよ
この村では
おまえとイーリアスを除いて
すべての住人が――ノルシュターレン:
……はい
はるか太古に滅んだ文明時代の人
なんですよねウァルトリール:
おー、そうそう
やっぱりおまえは察しがいいな
さすが俺の弟子……あれ?
おまえ……気付いてたのか……ノルシュターレン:
お師匠さまの書庫で本を読んだときから
なんとなくそうじゃないかって
思ってたんです
記されている年号が
すべて古代のものなんですもの
あんな古書、図書館にもありませんよ
最初は信じられませんでしたけど
そう思ってみると
やっぱりみなさん普通とは違うなって
魔法学に通じるお師匠さまはともかく
村のみなさんまで扱う文字が
全部、古代語なんですよ
はじめてこの村にきたときは
すごい高等学問を修めた天才集団かと
思って必死で覚えたんですからウァルトリール:
あちゃー、そうだったかノルシュターレン:
それで、クリスタルコアのことがあって
みなさん急にいなくなったり
出てきたり……
でも、わたしにとっては
みなさんが
なんであってもかまわないんです
こんなわたしを受け入れてくれた
とても大切な人たちなんですから
ノルシュターレン:
教えてください
なんでみなさんの姿が
変わってしまったんですか
これから
どうなってしまうんですかウァルトリール:
……………
おそらく近いうちに
俺たちは消滅するだろうなノルシュターレン:
…………え?
…………
また、見えなくなっちゃう
だけですよね?
でもでもほんとは一緒にいてくれて
またわたしの歌とかこっそり聞いて
からかうんですよね?ウァルトリール:
…………そうじゃない
これで、おわかれなんだノルシュターレン:
……………ウァルトリール:
遅かれ早かれ
こういう時がくることはわかっていた
だが、それでいいんだ
生きているものはいつか死が訪れ
別れの時がくる
それと同じこと、それが自然なことだ
ノルシュターレン
永遠などというものはないんだよノルシュターレン:
………………ウァルトリール:
思えば、森で迷っているおまえを見つけ
その姿をイーリアスと
重ねてしまった
本来ならなんの関係もないおまえを
この村へつれてきてしまった
すまないと思っているノルシュターレン:
………ちがうんです
ほんとは……わたし……
迷ったんじゃなくて……森に……
わた……わたし……あの街で……
暮らしてて……それで……
わたし……ほんとは……孤児で……
せっかく……ひきとってもらったのに
あはは……わたし……
なにをやってもダメだから……
ひっく……毎日……叩かれ……ウァルトリール:
知ってるよ
だから連れてきたんだノルシュターレン:
う……うえぇぇぇぇっ!
いやです、お師匠さまぁーっ
行っちゃいやですー
うぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!ウァルトリール:
すまねぇな、ノルシュターレン
……すまねぇ
ノルシュターレン:
うぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!
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